Rocky行政書士事務所
ホーム › コラム › 日台二重国籍と国籍選択
法律で読み解く日本 Vol.8

日台の二重国籍者は、成年後に「国籍の選択」が必要か

執筆:行政書士 吉田 翔
日台二重国籍と国籍選択

日本と台湾の二重国籍者は、成年後に「国籍の選択」をしなければならないのでしょうか。日台ハーフであり行政書士でもある私が、法律上できるだけ正確にお答えします。

まず条文を確認

外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が十八歳に達する以前であるときは二十歳に達するまでに、その時が十八歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

国籍法第14条第1項

「日本は台湾を承認していないから、選択は不要」?

動画や記事でこのように説明されているのをよく見かけますが、この説明は正確ではありません。

まず、国籍法第14条の条文には「日本が承認している国」に限るとは書かれていません。また法務省も、ある人が他国の国籍を持っているかどうかを一国が決めることはできないと明確に説明しています。台湾の国籍を持っているかどうかは、まず台湾の法律によって判断されます。

台湾に関わる身分・書類・国籍の問題について、日本の行政上の取扱いに特殊な点があるのは事実です。しかしそれは「台湾の国籍は外国の国籍にあたらない」こととはまったく別の問題です。法務省も国籍の確認に関する説明の中で「台湾出身者の場合は複数の書類・資料」が必要となる場合に触れています。

つまり、「日本が台湾を承認しているか」と「台湾の国籍が日本の法律上存在するか」は別の話なのです。

実際に日本と台湾の国籍を両方持っている場合は?

客観的に日本国籍と外国国籍を両方持っているのであれば、国籍法第14条の国籍選択制度の対象となります。つまり、法律上は国籍選択の義務があります。

選択しなかったら?

国籍法第15条により、法務大臣は国籍選択の義務を果たしていない人に対し、国籍の選択を催告することができます。催告を受けてから1か月以内に選択しなかった場合に、原則として日本国籍を失う効果が生じます。

そして法務省は令和3年(2021年)に公表した資料で「これまで法務大臣による国籍選択の催告がされたことはない」と明記しています。制度は法律上存在するものの、その時点まで実際に催告が行われたことはない、ということです。これが法制度と実際の行政運用の違いです。

日本国籍を選択した場合は?

国籍法第14条第2項により、「日本の国籍を選択する旨の宣言」で日本国籍を選択することができます。ただし、宣言をしても台湾の国籍がすぐに消えるわけではありません。国籍法第16条第1項は、選択の宣言をした日本国民は「外国の国籍の離脱に努めなければならない」と定めています。

法務省も、選択の宣言によって外国の国籍を当然に失うかどうかは、その外国の法律によると説明しています。台湾の場合、国籍の喪失は台湾の国籍法に基づき内政部に申請して手続きします。また法務省は、その後実際に外国の国籍を離脱しなかったとしても、日本国籍の選択が無効になったり、当然に刑事・行政上の処罰を受けたりするわけではないとしています。

正確な答え

日台の二重国籍者は、「日本が台湾を承認していないから」当然に選択が不要になるわけではありません。法律上、日本と外国の国籍を両方持っているのであれば、原則として国籍選択の義務があります。

一方で、「法律上の選択義務がある」ことと「実際に日本政府からすぐに選択を求められる」ことは別の問題です。日台の二重国籍の問題は「選択しなくてよい」とも「成年になったらすぐどちらかを放棄しなければならない」とも単純化できません。法律上の本当の答えは、ネット上の一言よりずっと複雑なのです。

法律で、日本を読み解く。

本記事は一般的な法律情報の紹介であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。具体的なご事情は個別にご相談ください。紛争・訴訟に関する事項は弁護士にご相談ください。

「法律で読み解く日本」のほかの記事